お寿司のネタでも馴染みのあるエビとシャコですが、似たような見た目から見分けるのが難しいと感じる方もいるのではないでしょうか。
エビやシャコは甲殻類ですが、細かく見ていくと、エビはカニやヤドカリと同じ分類に属している一方で、シャコは異なるグループに分類されます。
同じ甲殻類であるエビとシャコがどのように異なるのか、その特徴と正確な見分け方について詳しく解説します。
シャコとエビの特徴と分類の違い
ここでは、シャコとエビという甲殻類について、その基本情報と分類法を詳しく解説します。これらの生物は硬い殻で覆われている点が共通していますが、一般的にはその分類について詳しく知られていません。まずはエビやカニなどのポピュラーな甲殻類から見ていき、それを基にシャコとエビの違いを明確にしていきます。
「エビ目」の広範囲にわたる分類とその特徴
「エビ」という名称は一見単純ですが、実際には多様な種類が含まれています。これは、エビが属する「エビ目」すなわち軟甲綱十脚目が甲殻類の中でも広範なグループを形成しているためです。
「エビ目」には、クルマエビやイセエビのような典型的なエビから、ズワイガニや上海ガニのようなカニまでが含まれます。この大群からカニ下目とヤドカリ下目を除外した残りが、一般的に「エビ」と称されることが多いです。このように、エビという用語は非常に広い範囲を指し、厳密な分類ではありません。
エビの特徴としては、「長く延びた腹部」がありますが、これがかつて「長尾目」と呼ばれる理由にもなっていました。しかし、腹部以外の特徴は種によって大きく異なるため、発達したハサミを持つロブスター、顕著なヒゲを持つイセエビ、小さなサクラエビが同じ「エビ」として分類されるのは、少々奇妙に感じられるかもしれません。これが、「エビ」という広範なカテゴリーの存在理由です。
シャコ:エビやカニとは異なる特有の甲殻類
シャコは「長い腹部」が特徴の甲殻類で、しばしば「シャコエビ」や「ガサエビ」と呼ばれますが、一般的なエビとは異なる分類群に所属しています。シャコは軟甲綱トゲエビ亜綱口脚目(シャコ目)に分類されており、これはエビ目とは全く別のグループです。
日本では古くからシャコは食用として利用されており、特に東京では江戸前料理や天ぷらの高級食材として珍重されています。かつては庶民にも親しまれていたシャコですが、東京湾での漁獲量はかつての全盛期には年間1,000トンを記録していたものの、平成17年にはその量がわずか50トンにまで減少しました。現在では、主な産地は伊勢湾や瀬戸内海となっています。
エビとシャコの特徴的な違い:脚、顔、そして食感
シャコとエビは外見が似ているかもしれませんが、主に以下の三つの点で明確な違いが見られます。
- 脚の構造:
エビはハサミのある脚が特徴ですが、シャコは鎌のような形状の「捕脚」を持っています。この捕脚は、例えばモンハナシャコが貝を砕くのに使用するなど、多様な用途に使われます。食用シャコでは、捕脚のトゲで柔らかい獲物を突き刺して捕食することがあります。 - 顔の構造:
エビとシャコでは顔の構造も異なります。エビは頭部と胸部が一体化していて顔が大きいのに対し、シャコは頭部が胸部から独立しており、相対的に小顔です。シャコの顔には特徴的な飛び出した複眼と、顔周りに発達した鱗片を持つ第二触角があります。 - 味と食感:
食感も両者で異なります。エビはそのプリプリとした食感が特徴で、これは逃走用に発達した腹部の筋肉によるものです。一方、シャコの身はより柔らかく、エビほど筋肉が発達していません。
これらの違いを把握することで、エビとシャコを見分ける際に役立つでしょう。
シャコの美味しい食べ方の紹介
ここからは、海の珍味であるシャコを美味しくいただく方法を紹介します。
エビと比べてなじみが薄いかもしれないシャコですが、実はとても親しみやすく、簡単な調理でその本来の味を引き出すことができます。ただし、その美味しさを最大限に楽しむためには、適切な下ごしらえが必要です。
では、シャコを使った料理のコツについて詳しく見ていきましょう。
年に二度、シャコが最も美味しい季節
シャコは年に二度、その旬を迎えます。
最初の旬は5月から6月の産卵前で、この時期には雌シャコの腹部に赤い卵(カツブシ)がたっぷりと詰まっています。これらの卵はプチプチとした食感と濃厚な味わいが楽しめ、高級食材として珍重されています。
次の旬は11月から12月の産卵後で、この時期のシャコは身がふっくらとして甘みが増します。シャコは年に二度、その美味しさを最大限に楽しむことができる非常にお得な食材です。
シャコを美味しく保つための下ごしらえの必要性
シャコは水揚げされると急速に鮮度が落ちるため、適切な下ごしらえが非常に重要です。
この鮮度の低下は、シャコが放置されると身が痩せる現象に起因します。この現象は、シャコが死ぬと、脱皮時に使うはずだった酵素が身を消化してしまうために発生します。したがって、シャコを調理する際には、新鮮な状態で速やかに下茹ですることが推奨されます。
市場で販売されるシャコは通常、事前に加熱処理されていますが、自宅で下ごしらえを行う場合は、特に注意が必要です。
シャコの下ごしらえの基本手順
シャコを美味しく調理するための下ごしらえ手順は次の通りです。
- 最初にシャコを氷水でしっかりと冷やし、身を引き締めます。
- 大きな鍋に1%の食塩水を準備し、沸騰させます。
- 氷水で冷やしたシャコを沸騰している食塩水に入れます。
- 再び沸騰したら、シャコを4分間ゆでます。
- ゆで上がったシャコの胸部と尾部をハサミで切り取ります。
- 腹部の両サイドも切り落とします。
- 最後に、手で腹部の殻をむきます。
これらの手順に従うことで、シャコの風味と食感をしっかりと保ちながら、最高の味わいを楽しむことができます。
シャコを使った美味しい料理の提案
茹でたシャコは、そのままでも楽しめますし、わさび醤油やマヨネーズを加えるとその甘みが引き立ちます。
東京の伝統に習い、シャコをお寿司や天ぷらの具として使用するのも良い選択です。
その他、シャコを砂糖と醤油で甘辛く煮つける方法や、卵とじにしてご飯にのせる「品川めし」もおすすめです。これらはシャコの魅力を存分に味わうことができる料理法です。
シャコとエビのちがいまとめ
- シャコとエビは、外見は似ているが分類学的に異なる甲殻類
- エビはプリプリとした食感が特徴、シャコの身はより柔らかいのが特徴
シャコとエビはどちらも「長い腹部を持つ甲殻類」として知られていますが、分類学的には異なるグループに属します。
シャコはその銃弾のような速さで打撃を加える捕脚と、目立つ複眼が特徴です。江戸時代からお寿司や天ぷらの具材として東京の人々に特に愛されてきました。ぜひこの記事を参考にシャコを味わってみてください。