こどもの日が近づくと、広い空を力強く泳ぐ鯉のぼりがあちこちで見られるようになります。
鯉のぼりは「こどもの成長を願うもの」と広く知られていますが、鯉のぼりの各部位(パーツ)にはそれぞれ象徴的な意味が込められているのをご存じでしょうか?
鯉のぼりは単に一匹の鯉だけではなく、「真鯉(まごい)」や「緋鯉(ひごい)」など複数の鯉が存在し、その他にも様々な飾りが加えられています。
それぞれのパーツには、子どもたちの成長と健やかな未来を願う意味が込められています。
この記事では、鯉のぼりの各部位の名称と種類、それぞれの意味と、そして鯉のぼりの色が持つ象徴的な意味について詳しく解説します。
また、「なぜ鯉なのか」と疑問に思う方もいるかもしれません。
こどもの日ののぼりが「鯉」である理由についても合わせて詳しく解説します。
鯉のぼりとは?
鯉のぼりとは、「鯉」の形をした「のぼり」のことです。
のぼり(幟)とは?
「のぼり」とは、長い棒やポールの先に取り付けられる細長い旗のことです。
お店やイベント会場などで広く使用され、宣伝や目印として活用されているので、みなさんも一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。
「のぼり」は平安時代から使用されているもので、歴史ドラマにも家紋が入ったのぼりが使われるなど、昔から日本人に馴染みのあるものです。
現代では、相撲の力士の名前や演劇・歌舞伎の役者の名前を掲げるため、神社のお祭りや選挙の告知にも使用されるなど、多岐にわたる用途で利用されています。
鯉のぼりの始まりは?
鯉のぼりを飾り付ける風習は、江戸時代から始まったといわれています。
江戸時代の武家では男の子の立身出世を祈願し、家紋のついた旗やのぼりを飾りました。
一方商人の家では、のぼりの代わりに「黄表紙(きびょうし)」の絵を描いた五色の吹き流しを飾り、やがて吹き流しに鯉の絵を描くようになったといわれています。
では、なぜ鯉なのでしょうか?
鯉のぼりは、なぜ「鯉」なのか?
鯉のぼりは、前述のように「鯉」の形をした「のぼり」のことですが、なぜ鯉なのでしょうか。
その理由は、「竜門」という滝を登ると竜になるという中国の古い伝説にちなんでいます。
この中国の故事によると、かつて黄河の中流に「竜門」と称される連なる激流の滝がありました。
そこを登り切ることができた魚は竜になるとされ、多くの魚が挑戦しましたが、唯一鯉だけ成功し、竜となることができたと言われています。
この伝説から、鯉が滝を登る様子は立身出世を象徴するものと見なされるようになりました。
そのため、「〇〇の登竜門」という表現が生まれたのです。
鯉のぼりには、大きく成長し社会で成功を収めてほしいという願いが込められています。
鯉のぼりの各部位(パーツ)の名称は?
ここからは、鯉のぼりの各部位の名称について説明します。
一般的な鯉のぼりセットは、上から順に次のように構成されています。
- 回転球
- 矢車
- 吹き流し
- まごい(黒)…お父さん鯉
- ひごい(赤)…お母さん鯉
- こごい(青)…子供鯉
回転球(かいてんきゅう)
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回転球とは、鯉のぼりの最上部に位置し、光を反射する球形の装飾品です。
これは「この家に男の子が生まれた」と周囲にアピールするサインであり、神々にその存在を示す役割を持っています。
江戸時代末期には竹製の「駕籠玉(かごだま)」として知られ、後に金箔を施して豪華に進化しました。
矢車(やぐるま)
矢車は回転球の直下にあり、風車や車輪を模した形状で、風を受けると回転して音を立てます。
この形状は武士の矢をモチーフにしており、邪気を払う象徴とされています。
鯉のぼりの種類と色の象徴的意味
ここからは、鯉のぼりの種類(真鯉まごい・緋鯉ひごい・子鯉こごい)と、各鯉の色の意味を解説します。
まごいの色とその意味
「まごい」は「真鯉」と書かれ、最も上位に位置する黒い鯉で、父親を象徴します。
黒色は家族の大黒柱を意味しています。
ひごいの色とその意味
「ひごい」は「緋鯉」と書かれ、真鯉の直下に位置する赤い鯉で、母親を象徴します。
赤色は生命力と繁栄を表しています。
こごいの色とその意味
「こごい」「青い鯉」はひごいの下に位置する青い鯉で、子供を表します。
青色は若さと成長を意味しています。
家族が増えると、緑、紫、ピンクなど他の色の鯉も加わることがあります。
近年販売されている鯉のぼりのセットは3匹の鯉であることが多く、さらに、家族構成の変化に合わせて緑や紫、ピンク、オレンジの鯉も作られるようになりました。
これにより、新しい家族の一員が加わるたびに、違う色の小さな鯉を追加して、家族の成長を鯉のぼりで表現することが可能です。
矢車とその色の意味
矢車は邪気を払う効果があるとされています。矢車に用いられる五色は次の通りです:
- 青(緑)
- 赤
- 黄
- 白
- 黒(紫)
これらの色は古代中国の五行思想に基づいており、木、火、土、金、水の元素を象徴しています。五色が揃うことで、子どもを守り邪気を払う効力が増すと言われています。
さらに、矢車は神様に早く男児の誕生を知らせるための役割も果たしており、目立つ五色を用いることで神々の注意を引きやすくしています。
前述のとおり、回転球も男児の誕生を知らせる役割をもっているので、回転球と矢車の二つで神々にその存在を示しているんですね。
鯉のぼり各部の名称・種類・色・意味、なぜ鯉なのかまとめ
鯉のぼりの各部分にはそれぞれ、子どもに対する願いが込められていました。
鯉である理由も、昔の言い伝えになぞらえたお話から子どもの将来を願ったものでした。
江戸時代からあったとされる鯉のぼりの風習は、現代でもなじみの深いものですが、これからも大切にしていきたいですね。